───出会うふたり 翼side───
多くの人が憂鬱だと答える月曜日。
俺、三山 翼(みやま つばさ)も例に漏れず憂鬱だった。
俺は学校に着くと、教室には行かずに保健室へと足を運ぶ。
ここはあまり人が来ない。
俺にとっては絶好のサボりスポットになっていた。
「おーまた来たのか、おはようさん」
「はよーきぃやん」
保健室担当のきぃやんこと喜納 望(きなり のぞむ)に挨拶をし俺はベットへと向かう。
「こら、学校だぞー…一応起きとけ」
「…へーい」
気怠げに身体を起こすとベットが軋む。
「失礼します。喜納先生、三山来てます!?」
ノックとほぼ同時に勢いよく扉が開かれ担任が入室すると俺を発見し挨拶をして来る。
「お!来てたか!おはよう!」
「…はよーざいまーす…」
「今日は来ないか?」
「いいっす」
「そうかー!でも、俺はいつまでもお前のことを待ってるからな!」
担任は今日もむさ苦しい笑顔で去って行った。
「いい加減教室に行ったらどうだ?」
「きぃやんは俺の味方じゃないんすか?」
「味方だが…毎日毎日ここまで来てる担任さんの事も憐れに思えるんだよなー…教室から地味に遠いしココ」
確かに保健室と教室は端から端だ。考えただけで億劫に思える。
「あれは運動馬鹿だから距離とか関係ないだろ」
「まぁ、そうなんだろうけどな」
「てことで、寝ていい?」
「…はぁ。もういいよ好きなだけ寝とけ」
溜息をつきながら許諾してくれたので俺はそのままカーテンを閉めベットへと向かった。

何時間経ったんだろうか俺は目を覚ますと枕元に置いてあるスマホを開き時刻を確認する。
時刻は10時46分を指している。
丁度、休み時間に突入しようとしている所だった。
身体を起こし伸びをしていると、扉をノックする音が響いた。
扉が開かれ誰かが入室すると同時に、ドサッと誰かが床に倒れたような音が聞こえ俺は慌ててカーテンを開けた。
「大丈夫っすか……?」
「……」
反応がない。
肩を軽く叩く。
反応がない。
俺は倒れ込む小さな彼を抱き寄せベットへと運ぶ。
きぃやんはどうやら外出中らしい。
俺はどうすることも出来ずにベッドで眠る小さな彼を見つめることしか出来なかった。

何時まで小さな彼を見つめていたのだろうきぃやんが外出から帰って来た。
「きぃやん」
「お、どしたー教室行くか?」
「行かねーよ。それより此奴、ココ来た瞬間気絶したんだけど」
と小さな彼が眠るベットを親指で指す。
「あー駄目だったかー…」
「此奴ココの常連なの?」
「おー、病弱でな。しょっちゅうココで寝てるよ」
「ふーん」
「まぁ、その内目を覚ますだろうから。もし、俺が居なかったら面倒見てくれ」
「やだよ」
「そんなに反抗期ならお前を教室に送り届けるぞー」
「…ったく、わーった!わーったよ」
「よろしいよろしい」
と言いながらきぃやんは上機嫌に立ち上がり
「ほら、もー昼だぞ。飯だ飯」
「へーい」

お昼ご飯も食べ終えのんびりスマホを弄る。
きぃやんは校則は別に気にしないので目の前でスマホを弄っても何も言われない。
なんなら、きぃやんもスマホを弄っている。
何時までスマホを弄ってたんだろうかきぃやんは身体を伸ばしながら時計を見ると呟く。
「今日も暇だなぁー」
「暇だからこの仕事してんじゃないの?」
「まぁ、そうなんだけど。でも毎日こうなのも飽きるわ」
「ふーん、そういうもんなんだ」
「そうだぞー。まぁ、ないものねだりってやつだ」
「ふーん」

6時間目後半に小さな彼がやっと目を覚ましベットから出て来た。
だが、きぃやんは間が悪く小さな彼の担任に呼ばれ外出中だった。
ベットがある方を見ると背の低いどこか中学生のような風貌の男子生徒が居た。
「…あ、すみません。僕また倒れてました?」
「あぁ、はい…ここ来た瞬間パタリと」
と言うと、小さな彼は全てを悟ったのか御礼を告げた。
「…あぁ。介抱してくださりありがとうございました」
「どういたしまして」
「「……」」
そしてお互い気まづくなり固まっているときぃやんが空気を読んだかのように外出から帰って来たのだった。