時刻が21時になった頃。
お父さんはソファで寝落ちしてしまっていた。


同じく寝そうになっていた先生は、タクシーを呼んで家に帰って行った。






…タメ口の先生、新鮮だったなぁ。



あの敬語は根っこからかと思っていたが、どうもそうでは無い。




本当の先生は、タメ口も使う。
それを知れて良かった。







「お母さん。今日は何で先生がご飯食べて帰ることになっていたの?」
「1回、真帆の様子を見に家に来てくれたの。今真帆は寝ているみたいって話をしていたら、お父さんがご飯食べて行きなよって言いだしてね。なら、時間もあるし車を置いてからもう一度来たら良いじゃないってなったの」
「なるほどね」



お父さんもお母さんも、裕哉さんも。

みんな、ありがとう。





体の痛みはまだあるが、心はかなり癒されていた。







「…しかし真帆、早川先生…良い人だね」

「………うん」



その言葉を聞いて涙が込み上げてきた。



「お母さん。先生を受け入れてくれてありがとう」
「……そんなの当り前でしょう。………さ、家に戻るよ」
「…うん」





当り前じゃないよ。
だって、先生と生徒だよ。普通なら無茶苦茶反対される。




そもそも、私が先生と付き合っているって言ったとき2人も否定的だった。


だから、ここまで受け入れて貰えるとは思ってもいなかった。





本当、私は恵まれている。






涙が止まらない私は、お母さんに背中をさすられながら家の中に戻った。