三人はベタベタ引っ付こうとしてくるけど、「ベータだから」と特別扱いはしてこない。だから気を楽にして過ごせている、と思う。

「あっ、琴葉」

栞くんがあたしを呼ぶ。タブレットから顔を上げると、六つの目があたしを見ていた。その目にはハイライトがない。真っ黒な闇と熱を孕んだ目で、ゾクリと寒気が走る。

「な、何……?」

恐る恐る訊ねると、三人はニコリと笑みを浮かべる。いや、さらに恐怖が増すわ。

「もしも僕たちから逃げたら、大事な秘密バラしちゃうからね。だからずっとそばにいてよ」

「……わかってる」

この時々あるヤンデレタイムがなければ、比較的平和なんだよね。あたしが三人の望み通りの答えを言うと、三人の目にハイライトが戻った。

「ところで小説どうかな?面白い?」

「琴葉、ハーブティーが冷めるぞ」

「もう!二人とも、琴葉に話しかけないで〜!」

またいつも通りの三人に戻る。あたしは苦笑しながら彰くんの書いた小説の続きを読み始めた。