“ べ、つ、に! ”
勢いよく立ち上がりたいのを我慢して、吾妻くんに口パクで伝える。
こんなやりとり、ドキドキして仕方がない。
彼が目を細めるたびに、胸の奥が苦しくなる。
もちろん授業なんて頭に入ってこない。
気付けば吾妻くんの世界に引きずり込まれていて、逃げ出すことなど不可能に等しかった。
“ よく言うよ ”
くすりと笑った吾妻くんは、わたしから視線を外して、途端に机に突っ伏してしまう。
すっかり寝る体勢に入った彼を意味もなく見つめていると、災難が突如降りかかる。
「じゃあここ、今日は15日だから出席番号15番! 四宮答えろ」
ハッとして、慌てて吾妻くんから数学の教科書に視線を移す。
だけどいま何ページかすらもわからなくて、焦りで頭が真っ白になる。



