「嘘は……嫌い、です」


噛まれた耳が熱くて、泣きたくなる。

どうしてこんなことになったのか、遡りたくもない。


吾妻くんがどんな人かわかっていて家に上げたわたしの未熟さも。

彼と同じベッドにいる意志の弱さも。


何もかも嫌なのに、それなのに、吾妻くんに触れられたところはすごくすごく熱かった。



「ふは、上等じゃん」



そう呟いたあと、吾妻くんはわたしの横に倒れ込んだ。

そのまま当然のように抱きしめられ、寝る体勢に入ってしまう。


目を瞑っている姿があまりにも美しくて魅入っていると、ぱちっと目を開いた吾妻くんが可笑しそうに表情を歪めた。


「え、杏莉ちゃん心臓うるさ……」

「……突き飛ばしますよ」


「え、それはヤダ」

「じゃあ黙っててください……!」


「ハイハイ」



ずっとひとりだったから。

癪だけれど、いつもは眠くならないのに、吾妻くんに抱きしめられているとすぐに睡魔がやって来たから。



……こうやって誰かと温もりながら夜を越すのも悪くないのかもしれない。

そう思いながら、目を閉じた。