「だから、どんだけ逃げても無駄だね?」 嬉しそうに、いや、……楽しそうに。 吾妻くんは掴めない。 飄々としているのに、少し真面目な顔したり。 キケンだと思えば、優しかったり。 安心して近づけば……、待ってましたとばかりに噛みついてくる、そんな危ない人。 「……っ、今日、だけです」 「んー」 「聞いてますか……っ」 「聞いてる聞いてる」 適当に返事をして、吾妻くんはまたもや首筋に顔を埋めた。 その仕草にわたしがどれほどドキドキしてるか、まったくわかっていない。