噛んで、DESIRE




澪子のありがたいお言葉を受け取りつつ、やっぱり視線は吾妻くんに向いてしまう。

わたしたちの会話は、きっと聞こえていない。


寝息ひとつ立てずにすやすやと眠る金髪の彼を見ていれば、澪子は思い出したように言った。


「そういえば、吾妻くんが住んでる場所、杏莉の家の近くだった気がするんだよねえ」

「そう、なの?」


「これまた誰かの噂話だから本当かわからないけど、杏莉が不良にならないことを祈っておくね」

「ならないよ……」



小さく笑ってそう返したけれど、両親からすれば、わたしはきっと不良なのだと思うと言葉に詰まる。


家を出てひとり暮らしをしている女子高生は、きっとそんなに多くはいない。



「杏莉は可愛いんだから、変な男に引っかからないように細心の注意を払うべき!」

「が、がんばります……」


「もう……ほんと、心配だよ……」