静止を聞いてくれない吾妻くんは、わたしの首筋に顔を埋める。
「……っ、」
毒牙にかかったわたしは、彼に溺れて苦しくて、どうしようもなく泣きたくなる。
……苦しいのに、離れたくない。
うっすら涙目になったわたしを見つめて、彼は困ったように目を細めた。
「あー……それは誘ってんだろ」
「さ、さそ……?」
「あのさあ……さすがの俺も、限界っていうものがあるんだけど?」
はああ……っと重苦しいため息をついたあと、吾妻くんは黒髪をわしゃわしゃと乱す。
はらりと落ちてくる髪は少しだけ金色が混じっていて、ドキンと心臓が高鳴った。
「俺ね、杏莉ちゃんのこと大事すぎて仕方ねえの」
「……は、はい」
「ずっと隣にいてほしいし、噛みたいって思うのも襲いたいって思うのも杏莉ちゃんだけだよ」



