噛んで、DESIRE




吾妻くんは、至って冷静だった。

わたしをそんなふうに褒めてくれるのは、お世辞でもなんでも、嬉しかった。


いますぐに抱きしめたくなる。

彼の腕の中で泣きたくなる。


吾妻くんは、わたしを大切に想ってくれるひと。

強くてまっすぐで、……少しキケンなひと。



吾妻くんの言葉に、父は反論しなかった。

何を言おうとしても、自分の立場が不利になるとわかったのだろう。


それほどまでに、吾妻家が四宮家を飲み込んでいただなんて、……わたしはぜんぜん知らなかった。


「婚約は、また正式にさせていただきます。急ぎはしません。杏莉さんと、しっかり話し合って決めていきたいので」


吾妻くんは為す術がなく黙っている父に、さらに釘を刺す。