噛んで、DESIRE



状況が理解できずに震えていると、わたしのことなど気にも留めず、吾妻くんは父に笑顔を向けた。


「四宮さんには父が大変お世話になっているようで、このように挨拶出来て光栄です」

「いや何を言っている。四宮家は、吾妻家のご支援があって成り立っている。お世話になっているのはこちらだ」


「そんなことないですよ。お互い様です」

「吾妻のご子息は立派だな。それなのに、うちの長女と言ったら……」



突然わたしに火種が飛び、びくりと肩を震わせる。

慌てて角度に気をつけながら頭を下げ、困惑を隠せないまま挨拶をする。


「……四宮、杏莉です」

「存じておりますよ、杏莉さん。お父様から縁談のお話はお聞きになりましたか?」

「あ……はい。伺っております」

「それなら良かった。もちろん断っていただいても大丈夫です。大事なのは、あなたの意志なのですから」