噛んで、DESIRE



「杏莉、失礼な態度は出すな。わかっているな?」

「……、はい」


大丈夫、まだ大丈夫。

自分を落ち着かせて、なんとか返事をする。


途端に従順になったわたしを見て、父は満足そうにうなずいた。


「それで良い」


父がそう言った瞬間、家の中が騒がしくなる。

玄関へと急いで向かうお手伝いさんの様子を見ると、おそらく相手の方がいらっしゃったのだと察する。


……ついに、来てしまった。

父にはどう思われようと構わないけれど、相手のお家に失礼のない断り方を急いで考える。


刻一刻と迫るそのときを待つのが苦しくてたまらない。



「いらっしゃったようだな。杏莉、立ちなさい」


言われるがまま、両親の横に立つ。

緊張でおかしくなるんじゃないかと思いながら、息を整える。