噛んで、DESIRE



……わたしは、また変われなかった。

変わろうとしても、それ以上に強い力が存在した。


一生このままなのだろうか。

父に囚われ、決められた結婚をし、味気ない日々を送るのか。


───『今夜泊めてくんない?』


吾妻くんの、軽薄な言葉や妖艶な笑みを、もうそばで感じられないなんて無理だ。

それなのに、もう反抗することは出来なくて……涙が視界を滲ませる。


……父の前では、ぜったい泣かない。

思い通りには、なりたくない。


泣きそうになるのをグッと堪え、小さく息を吐く。

まだ、正式に縁談が成立したわけではないのだ。


今日いまから挨拶に来ると言うことは、わたしにも少しは発言権があるのかもしれない。

……まだ諦めたらダメだ。