わたしはわがままなのかもしれない。
欲張りなのかもしれない。
父に、家に、囚われて逃げ出せない身なのに。
「あ、そうだ」
となりで気の抜けた声が聞こえたと思うと、吾妻くんがわたしの腕を引っ張って歩き出した。
「焼きそば食べるの忘れてた。杏莉ちゃん着いてきて」
「……え、で、でも店番ですよ」
何を突然。
吾妻くんの突拍子のない行動はよくあることだけれど、さすがにいまは焼きそばを食べている場合ではない。
困惑して彼を見るも、ほかのクラスの皆んなが可笑しそうに声をかけてくれた。
「ほら四宮さん、店番なんて良いから気分転換してきなよ!」
「店番はわたしたちに任せて!」
「吾妻の自由さを止められるのは四宮さんしかいないからな!」



