噛んで、DESIRE




「じゃあな、杏莉」


去っていく父に、頭を下げた。


……どれだけ傷付けられても、父の言葉は正しい。

わたしよりも妹のほうが抜群の才能がある。

小さい頃から才能が開花していた妹ばかり可愛がり、わたしはいっさいの興味を向けてもらえなかった。


だからこそ、今日こうして見に来てくれたのも奇跡に近かったのに。

……それなのに、認められるような作品を作らなかったわたしがだめなんだ。


どんどん気分が沈んでいき、胸の奥が苦しくなる。

……わたしはいつまで、こんなことを繰り返すのだろう。


やめたら良いのに、やめられない。

好きと出来るは違うのだと、改めて実感させられた。