噛んで、DESIRE



自分のことじゃないのに、こんなにムキになってくれている。

そんな親友がいることに改めて気付いて、冷え切った心が少しだけ溶けていく。


「否定しているんじゃない。世間的に見て、杏莉には華道の才能が備わっていないというのが事実なんだよ。未熟なままで、四宮を名乗ることが許されないくらいにはな」

「でも……っ」


「まあ、“お遊び”としての生け花なら上出来なのだろうな。それを華道とは呼ばないけれど」

「……っ、」



……もう、いいよ澪子。

そう思って、彼女の背中を弱く叩いた。


大丈夫、わたしは大丈夫。

こんなの、ぜんぜん、へっちゃらだ。


だって最初からわかっていたこと。

自分に華道は出来ないと打ちのめされたはずなのに、皆んなに褒めてもらって嬉しくなってしまっただけだから。