「やめてください。わたしは杏莉のおかげで、この学校で楽しい思い出が出来ましたから、後悔なんてしていません」
「……そうか。ならひと安心だが」
「それに、杏莉の……、杏莉のこの作品は、わたしはとてもすごいと思います」
澪子は入り口のお花を示してそう言う。
彼女の表情は迷いがなくて、わたしの作品を褒めてくれるまっすぐさが伝わってくる。
ずっと守ってもらってばかりで、澪子にわたしは何も与えられていない。
弱い自分が嫌なのに、澪子の言葉は純粋に、ないてしまいそうなほど嬉しかった。
「ぜったいに……杏莉には華道で人の心を揺さぶる力があります。……だから、お願いですから、否定しないでください」
父に頭を下げた澪子は、わたしよりもずっと泣きそうな表情を浮かべていた。



