噛んで、DESIRE



着物を見にまとっている父は、明らかにその場から浮いていた。

だけどその姿はわたしが知る父以外の何者でもなく、数年も会っていないのに、流れるように記憶がよみがえってくる。


幸い今のタイミングではお客さんは教室におらず、店番のクラスメイトだけが父に注目していた。

そのなかで、隣に立っている吾妻くんは、怖いくらいの無表情だった。


「……どう、して」


小さく父に尋ねる。

高校に入って、……いやもっと前から、父の関心はわたしになかった。



妹の純恋にばかり構って、わたしが何をしていようと気にも留めなかった、そんな父だ。

当たり前に行事ごとに来るわけもなく、ましてやこの高校の入学はわたしが勝手に決めたために、まさか文化祭を見に来るだなんて、思ってもみなかった。