噛んで、DESIRE



営業スマイルは上手いんだから……と呆れながらも、彼の隣で店番をする。

お花に囲まれた空間は幸せいっぱいで、ずっとここにいたいと願ってしまう。


……だけれど、人生はそう甘くない。

そんなことはずっと前からわかっていたはずなのに、優しい世界に触れてしまったせいか、目が覚めた途端暗闇へと堕ちていく。


それがただの妄想でなくなるのは、とある声が耳に入ってきた、その瞬間だった。


生きた花の匂いが、ふっと鼻を掠めた。

張り詰めた空気が、教室に迷い込む。




「────杏莉」



反射的に、ビクッと肩が揺れた。

それに連動して、指が震えているのを自覚する。


……ああ、だめだ。

わたしはどうしても、囚われたままだ。


「……、お父様」



勇気を振り絞って顔を上げ、視線を移した先には、厳格な表情をした父が立っていた。