噛んで、DESIRE







「なーあ、杏莉ちゃん」

「……なんですか」

「今日は構ってくんねーの?」

「いまはそれどころじゃないんですよ……」



最近、吾妻くんは夜になると、こうやってわたしを後ろから抱きしめて離してくれない。

少し苦しいくらいの抱擁はドキドキを伴いながらも、ほかのことに夢中ないま、かなり困っている。


「さっきからずっと花とばっか会話してさ。俺マジ暇すぎて死にそうだわ」

「……う、ちょっとだけ辛抱してください」

「んー、無理」



不機嫌そうな吾妻くんを、あいにくいまは構ってあげられそうにない。

なぜならわたしは、家に帰ってからは爆速でご飯を作ってお風呂に入り、ずっと生け花を続けているから。


だって大袈裟かもしれないけれと、わたしの作品にクラスの命運がかかっている。

素晴らしい作品に仕上げるために、ずっとお花たちと睨めっこし続けていたら、吾妻くんが我慢ならずに話しかけてくる……というのが最近の流れだった。