噛んで、DESIRE




四宮(しのみや)、です」

「下の名前は?」


「杏莉、です」

「ふうん、アンリちゃん」


平然とちゃん付けをしてくるのは、狡いと思う。

聞いてきたくせに、ぜんぜん興味なさそうなのも良くないと思う。


……また、ドキッてしちゃった。


わたしは平静を装うのに必死で、ついでのカモフラージュに漢字も教えてみる。

杏莉、という字を宙に書けば、納得したように吾妻くんはうなずいた。



「俺の名前、吾妻梓ね」

「あ、存じております……」


「はは、だからなんでそんな、かしこまってんの?」



可笑しそうに顔を歪める吾妻くんは、一度煙草を吸って吐いて、また笑った。


「なんか面白いわ、杏莉ちゃん」

「そう、ですか……」


ゆっくりとうなずいた吾妻くんは、何かを考えるようにしてわたしの顔を見つめている。

そうして不穏な笑みを浮かべたかと思うと、彼は薄い唇を開いて言った。



「でさ、そんな面白くて、タイミング良く現れてくれた杏莉ちゃんに、ひとつ聞いてほしいことあるんだけど」