噛んで、DESIRE



「なんか……怒ってますか?」


わたしの質問は、よけいに彼を不機嫌にさせたかもしれない。

怪訝そうに片眉を上げた吾妻くんは、さあね、とでも言うように首を傾げた。


「ちょっと違うかな」

「じゃあ、拗ねてる……みたいな?」


「んまあ、どっちかというとそっちかな」

「意味わからないですよ……」



どうしたら機嫌がなおるんだろう。

それがわからないわたしは、まだまだ彼の扱いに慣れていない証拠だ。


どうしようかな……と思っていると、吾妻くんが振り返って、動かないで悩んでいるわたしを見た。

そして、困ったように口を開いて言った。


「杏莉ちゃんさ、ぼーっとしてたら置いてくよ」

「誰のせいですか」


「はは、俺のせい?」

「……上出来です」



なんだかんだで、隣を歩くわたしたち。

近いのか遠いのかわからない、微妙な距離。


お願いだからクラスの人に会いませんようにと願いながら、駅へと向かった。