噛んで、DESIRE




「となりの、席の者です……」



おそるおそる、座り込んでいる彼に近付く。

近付くのさえも、ためらってしまう。


キケンな雰囲気を纏っている吾妻くんと話すのは緊張するけれど、怖いとは思わなかった。


「なに、すごい敬語じゃん」


はは、と無感情に笑い、吾妻くんは紫煙を燻らせる。

緊張しながらも、彼の一歩前に立ってみる。


だけど、わたしが見下ろしているような体勢なのが気に入らず、少し迷ったあと距離をあけてしゃがみ込んだ。

思ったよりも吾妻くんのお顔が近くにあって、至近距離で冷たい瞳に捉われる。


……美形だなあ。

クラスの子たちが彼のことを“美しい”と称していたのに大いに賛同してしまう。


だって、もはや彫刻みたい。

それくらい人を魅了する美しさが彼にはある。