……こんなときも、あまりにも美しすぎる。

おかげで、憤慨しようにも出来ない。


見とれてしまいそうになるのをなんとか耐えながら、小さくため息をついた。


「じゃあ、……聞きますけど。どうして堂々と名前で呼んだりしたんですか」


あれは絶対に故意だったと思っている。

ぜったい騒ぎになるってわかっていて、わたしのことを、いつもみたいに“ 杏莉ちゃん ”と呼んだ。

おかげでその後、教室中に多大な混乱を招き、クラスメイトから『どういうこと?!』と尋問され、班決めどころではなくなったのだ。


その責任はすべて、この目の前の彼、吾妻くんにある。

でも当の本人は気にするそぶりなく、今もこうして、つまらなさそうにピアスをいじっているのだから仕方ない。