噛んで、DESIRE




吾妻くんが、なぜかこんなところにいる。

しかも、わたしの家の目の前に。


思考が追いつかなさすぎて軽くパニックになっていると、やっと金髪の彼はわたしに視線を向けた。

音が鳴りそうなほど、バチッと視線が絡む。


朝、目が合ったときと同じように、ドキッと胸が高鳴った。


吾妻くんはじっとわたしを見て、怪訝そうに首を傾げている。

その手には、紫煙の立つ煙草が握られていた。


何かを考え込んでいる仕草を見せる吾妻くんの言葉をなんとか冷静に待っていると、彼はやっと思い出したように口を開いた。


「ああ、となりの席の子だ」



思ったよりも優しいトーンで、さらにそんなことを言ってくるのだから、拍子抜けしてしまう。


……朝目合ったの、覚えてないんだ。


なぜか少しだけショックを受けつつも、こくりとうなずく。