噛んで、DESIRE







『杏莉、ちゃんと栄養あるもの食べること! あと、夜道は気をつけること!』



澪子の相変わらずの過保護なラインに心が温かくなりながら、学校帰り、薄暗い夜道をひとりで歩く。

今日は委員会があり、さらに居残って少し勉強していたから遅くなってしまった。


澪子がここまでわたしを心配するのには、もちろん理由がある。

澪子は生まれた頃からの親友で、家の事情も、わたしの気持ちも、ぜんぶ知ってくれている子。

わたしがいまひとり暮らしをしていることもずっと気にかけてくれていて、週に何度か遊びに来てくれている。

その気持ちは本当に嬉しくてありがたいけれど、澪子に無理をさせてないかときどき心配になってしまう。


そうは言っても、いまはもう春だからそこまで外は暗くないけれど、夜道をひとりで歩くのはあまり得意じゃない。