公爵令嬢としてなんの疑問もなくわたしはフランク学園に通っていた。あの日、ヒロイン・ユイナが現れるまでは。
取り巻きのひとり伯爵令嬢ジュリエッタを連れ、さっそうと廊下を進んでいたわたし。周りの生徒が次々に道をあけて行く。
それはそうだ。公爵令嬢の立場はこの学園でヒエラルキーの上に位置する。ハナコ・モッリが道を譲るのは、それこそ王族を前にしたときくらいのものだ。
そんな状況で階下からまっすぐ上って来る女生徒がいた。制服のリボンの色からして一学年下のようだ。
わたしを見ても避けようともしない。
周囲がハラハラとした視線を送っているが、その女生徒は堂々と階段を上り切った。
(このわたくしを知らないなんて……。よほど田舎出身の者なのね)
そんな相手をいちいち注意する意味もない。気にも留めず階段へと歩を進めると、すれ違いざまにぼそりと耳元で声がした。
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
驚いて足を止める。目の前でにらみつけているのは先ほどの女生徒だった。
近くで見てもやはり知らない顔だ。確認のため横にいたジュリエッタを見やる。だが彼女も戸惑った様子で首を横に振ってきた。
「あなた、どこかで会いまして?」
「ふざけないで! 悪役令嬢がちゃんと仕事してくれなきゃ王子とのイベントが起きないじゃない!」
何を言っているのか意味が分からない。あっけにとられて女生徒の顔を見た。
取り巻きのひとり伯爵令嬢ジュリエッタを連れ、さっそうと廊下を進んでいたわたし。周りの生徒が次々に道をあけて行く。
それはそうだ。公爵令嬢の立場はこの学園でヒエラルキーの上に位置する。ハナコ・モッリが道を譲るのは、それこそ王族を前にしたときくらいのものだ。
そんな状況で階下からまっすぐ上って来る女生徒がいた。制服のリボンの色からして一学年下のようだ。
わたしを見ても避けようともしない。
周囲がハラハラとした視線を送っているが、その女生徒は堂々と階段を上り切った。
(このわたくしを知らないなんて……。よほど田舎出身の者なのね)
そんな相手をいちいち注意する意味もない。気にも留めず階段へと歩を進めると、すれ違いざまにぼそりと耳元で声がした。
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
驚いて足を止める。目の前でにらみつけているのは先ほどの女生徒だった。
近くで見てもやはり知らない顔だ。確認のため横にいたジュリエッタを見やる。だが彼女も戸惑った様子で首を横に振ってきた。
「あなた、どこかで会いまして?」
「ふざけないで! 悪役令嬢がちゃんと仕事してくれなきゃ王子とのイベントが起きないじゃない!」
何を言っているのか意味が分からない。あっけにとられて女生徒の顔を見た。