緒臣くんのキケンな誘惑。




緒臣くんとの言葉が完全に一緒ってわけではない。
でも似てて、安心感があって、懐かしさがあって。
よく分からない気持ちに襲われた。

私からしたら……もう既に緒臣くんはヒーローなのに。
なんて心の中で思っても上手く声に出すことができなかった。


「…紫夕?」

「…っ、え、あ、えっと……っ」

「……そんな可愛い顔しないで」

「……っか、かわ…!?」


耳まで熱くなるのを感じて緒臣くんを見つめると、緒臣くんはどこか困ったように笑ってそう言った。

可愛い顔しないでなんて言われたら。
なんて返せばいいのか分からなくて困ってあわあわしてしまう。


「……あー」

「っ、?」

「ダメだね俺、重症だ」

「…え?」

「紫夕のこともっと困らせたくなる」

「な……っ!?」


そう言って照れたように顔を手で覆った緒臣くんに、私の脈打つスピードがピークに達する。
こ、困らせたくなるって……っ?


「一々可愛すぎるとか、紫夕はずるいよ」


そう言ってまた私を困らせた緒臣くんが浮かべた笑みは、やはりいたずらっ子のようだった。