「あるなら最初っから出せよ」 「次は容赦しねぇからな」 恐怖を具現化したような人を目の当たりにしたからかもしれない。 手前の二人に毒を吐かれても、もう怯むことはなく、階段を下りていく背中さえ小さく見えた。 「ま、頑張ってね」 彼は──相楽さんは、最後に他人事みたいにそう言って去っていった。 姿が見えなくなったあとも、わたしはしばらく呆然と立ち尽くしていた。