刹那、胸の中心がたしかな熱を帯びた。
「んだよテメエ、若造のくせに……」
「おい、やめとけ。こいつ役員共の“オキニ”らしいぞ。今日で謹慎が解けたって……」
「あぁ? だからなんだってんだよ。……おい、あんまでしゃばってんなよ相楽」
──やっぱりそうだ。
相楽さんだ……っ。
自分の状況を差し置いて胸が高鳴った、次の瞬間。
「……ガタガタ抜かすな。その女から手を離せ」
鈍い音とともに、体がぐらりと傾いた。
──地面に落ちる。
とっさに覚悟したけど、いつまで経っても、衝撃は襲ってこない。
ふと、煙草の匂いが鼻を掠めて。
その姿を捉える前に、涙が零れた。
おそるおそる目を開いた先には、……ずっと会いたかった人。
「っ、相楽さ──」
そんなわたしの声は
──パンッ……
という、短い破裂音にかき消された。



