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「まず、ここにいる花園ご夫妻と琴理、愛理嬢にだけ話す内密の話です」
応接間のソファに、心護が長椅子、その向かいの長椅子に琴理の両親、そしてコの字を埋めるように並んで座る琴理と愛理。
琴理が心護側。
心護にあらかじめ言われて、父は執事も下がらせている。涙子と風子も廊下で待機だ。
「叔父である淋里が倒れました」
「えっ」
「淋里様が!?」
琴理が反応し、父が声をこわばらせた。
「何が――あったのですか?」
琴理が問うと、心護はため息をついた。
「それが……昔交際関係にあった女に襲われてだな……」
組んだ手の上に額を載せ、心護は吐き出した。
「痴情のもつれというやつですの?」
「ああ……簡単に言えば醜聞だ」
素早く反応したのは愛理だった。
心護も、先ほどまでの『兄妹喧嘩』の様子も消えて、落ち着いた、けれど申し訳なさそうな声だ。
「淋里様が……?」
つぶやいた父に、心護が答える。
「ええ。うちの両親の間でもみ消す話でしょう。いっそ公にすれば、跡目争いから叔父を退けることも出来ましょうけれど」
「新里様たちはそうはされない、と?」
「なんだかんだ兄弟仲はいいんだ、父と淋里兄さんは」
琴理の確認に、心護はため息とともに肩をすくめた。
そういえば、と琴理も思い出す。
淋里と初対面のとき、兄である新里を『兄ちゃん』と呼んでいた。
跡目争いをしていた兄弟仲にしてはずいぶん砕けている、と不思議に思ったのだった。
「淋里様の話がもみ消されるものならば、両親は何に巻き込まれるのでしょう?」



