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「琴理!」
「お声が大きいですよっ」
バンッと、愛理の部屋の扉を壊さん勢いで姿を見せた両親に、琴理は口元に指を立てて諫めた。
両親ともに琴理の姿を見てほっと息をついたあと、愛理の様子を悟ってしまったという顔になる。
「あ、――ああ、すまない」
「愛理は寝ています。……父様、母様、このたびは申し訳ありませんでした」
琴理がベッドのふちから立ち上がり頭を下げると、歩み寄った母がそっと琴理の肩に手を置いた。
「こちらこそごめんね、琴理。宮旭日様から、琴理をあちらへ、というお話は何度も来ていたのに……」
「そのことなのですが、……」
ちら、と琴理が父を見上げると、父は相変わらず難しい顔をしている。先ほどの大声が嘘のようだ。
「まあ……そうだ。なかなかお前を手放してやれなくて、すまなかった。宮旭日でのお前の暮らしぶりを聞いて、安心しているよ」
そう言う父は、少し困ったような笑みを見せた。
琴理の記憶にほとんどない、笑顔の父。
「ありがとう、ございます。戻られたら起こすと約束していましたので……愛理、起きられる?」
琴理は泣きそうになるのをこらえて、早口でそう言った。
声をかけながら軽く揺すると、愛理の瞼が動いた。
「ん……ね、さま……?」
「父様と母様が戻られましたよ」
「はーい……」
むくり、と起き上る愛理。
だが、まだ眠いのか瞼が開いたり閉じたりしている。
「もう少し寝ていますか?」
「いえ……起きます……」
愛理はそう言うも、意識は完全には覚醒していないようだ。頭が前後している。
そんな愛理の傍に風子が回った。
「愛理様、琴理様がいらっしゃるのは今だけですよ。存分に甘えるチャンスですよ」
風子がささやいたその言葉を聞いて(愛理の傍らにいた琴理にも聞こえていた)、愛理の目はぎらっと光った。



