涙子は、琴理自身から心護へのはっきりした気持ちを聞いたことはない。
琴理が心護を嫌っている素振りはないから安心しているけれど、もし琴理が『運命の人』なんかに出逢ってしまったら……宮旭日の行く末は破滅かもしれない。
一度好意の有無を確認した方がいいのだろうか……心護との結婚を拒否したことはないし、赤子を産むことも嫌悪はしていないようだけれど……。
……こっそり訊くことにしよう。
今は心護にとって一番の難関である愛理がいるし、うっかりしたことを琴理が言ったらあとあと大変そうだ。
「失礼します……」
控えめな声とともに、風子がドアを開けた。
「あ、風子ちゃん、ありがとう。そこにお願いします」
戻ってきた風子に、琴理はベッド脇の卓子を示す。
風子はそこにカップとティーポットの載ったお盆を置き、ベッドで横になる愛理を見た。
「愛理様は……お眠りですね」
「ええ、今寝入ったばかりで。父様と母様が戻ったら起こします」
「承知致しました」
頭を下げた風子に、琴理は声を潜めて話しかけた。
「風子ちゃん、最近の愛理の様子はどうですか?」
その問いかけにぴくりと動く風子の肩。
一瞬唇を引き結んだが、すぐに目を伏せて答えた。
「はい。……琴理様の、ご推察の通りかと」
「……ごめんなさい、風子ちゃん」
琴理は額を押さえて謝る。
「いえ。琴理様は許嫁様がいらっしゃるのですから、いつかはこうなることはわかっていましたので……」
「でも、もう少し考えておくべきでした……」
何やら琴理と風子しかわからないやり取りをしている。
「あの……愛理さまに何かあったのですか……?」
涙子が問うと、琴理も目を伏せながら答えた。



