「すみません、涙子さん。せっかくついてきてくださったのに……」
「愛理さまは本当に琴理様のことが大好きなのですね。……大変失礼ながら、何事も評判は噂の域を出ないものと思いました」
琴理よりも宮旭日の許嫁に相応しいという評判は、当然ながら涙子たちも把握している。
しかし今日会った愛理の感じを見れば、一概に『相応しい』という感覚はなかった。
琴理は苦笑を見せる。
「愛理の聡明とか、愛らしいというのは本当なんです。わたしのことに関しては暴走気味ですけれど。見目はこの通りだし、簡単に言えば頭と要領がいいんです。学ぶことも好きで吸収が早い。小さい頃はベッドにいるしかなかった時間のすべてで本を読んでいたんです。知識は明らかにわたし以上、花薗において父様に一番近い知将は愛理です。退鬼師として仕事をすることは難しいですが、花薗の会議の場には必ず呼ばれ、いわば軍師のような立場に立っています」
「そうなのですか……」
涙子は、琴理のあくまで客観的な評価に頭を上下させた。
そんなすごい妹がいたら、涙子だったら嫉妬していい関係は築けないと思ったからだ。
「花園はわたしと愛理の二人姉妹ですから、わたしにたくさん子が生まれれば花園の養子になったり、そうでなかったら傍系から養子を取ることになると思います。病弱の愛理に出産を望むことは、両親も考えていないので。なのでわたしはわんさか産むつもりいます」
最後、握りこぶしで力説した琴理。
涙子は深くうなずいた。
「それは喜ばしいことですが、琴理様もご無理はなさいませんように」
「はい。健康でいないと心護様や皆さんにご迷惑をおかけしてしまいますから」



