君との恋のエトセトラ

ドリンクをオーダーしてテーブルに着くと、航は「単刀直入に言う」と前置きして話し出した。

「良かったら本音を聞かせて欲しい。お母さんと妹さんに、毎月いくら仕送りしたいの?」

思わず面食らったが、真っ直ぐに真剣な眼差しを向けられて凛はおもむろに口を開く。

「はい。出来れば20万円送りたいと思っています」
「ひと月20万ね。ごめん、君の派遣社員としての月給を聞いてもいいかな?」
「あ、はい。大体ひと月手取りで26万ほどだそうです」

航は小さく頷くと、ゆっくりと言葉を選びながら凛を見つめた。

「落ち着いてよく聞いて欲しい。君がお母さんと妹さんの為に月に20万の仕送りをしたい気持ちはよく分かる。だが、それは現実的ではない。はっきり言うと不可能だ。手取り26万から20万を仕送りすると、君はひと月6万で生活しなければならなくなる。ここ東京ではそれは無理だよ」
「はい」

自分でも分かっていた。
だが仕送りはどうしてもそれくらいの金額にしたかった。
なんとか方法はないか、安い部屋はないかと考えていたが、今こうして冷静に無理だと言われ、凛は、やっぱりそうかと心が沈むのを感じた。

「もう一つ仕事を増やせばなんとかなるかと思ったのですが、やはりアパートの保証人の問題があって…」
「そうだね。保証人なしでも賃貸契約を結べる場合もあるよ。家賃保証会社を利用したりとかね。だけどそうすると、ますます仕送りのお金は捻出出来なくなる」
「はい…。やっぱり私の考えは甘かったのですね」

うつむいてギュッと唇を引き締める凛に、航は胸が痛くなる。

(まだ若い純粋な女の子が、家族の為にこんなにも健気に頑張っているのに。何とかしてあげられないのか)

お金を渡すのは簡単だが、きっとこの子は受け取らないだろう。
何か別の方法は?
納得してくれるようなやり方はないのか?

その時、ふと先程の
「もう一つ仕事を増やせばなんとかなるかと思ったのですが」
という凛のセリフが浮かんだ。

「そうだ!君、もう一つ仕事をしないか?そうすれば月に20万仕送り出来るよ」
「えっ!本当ですか?」
「ああ。それに賃貸の保証人の問題もなくなる。どう?」
「はい!やりたいです!どんなお仕事ですか?」
「住み込みのハウスキーピングの仕事だよ。つまり、掃除や洗濯とか」
「住み込みでいいのですか?はい!ぜひやらせて頂きたいです」

それなら、今の仕事と並行して無理なく出来そうだと、凛は目の前が一気に明るく開けた気がした。

「私、精一杯努めます。河合さん、そのお宅を紹介して頂いてもよろしいでしょうか?面接を受けさせて頂きたいです」

航はクスッと笑って頷いた。

「よろしいですよ。ちなみに面接は不要。君なら即、採用だ」
「え?どうしてですか?」
「雇い主は俺だから」

……は?と、長い沈黙のあと凛は目を丸くした。