また月曜日がやって来た。

月初めのミーティングの後、すぐに外回りに行っていた航は、打ち合わせを済ませてオフィスに戻った。

「戻りました」
「おお、河合。お疲れ」

課長が顔を上げ、続いて凛がコーヒーを持ってデスクに来た。

「お疲れ様です」
「ありがとう」

ネクタイを少し緩めて椅子に座り、凛の淹れてくれたブラックコーヒーを飲む。

チラリと目を向けると、パソコン作業をしている凛のデスクには、あのイニシャルボトルが置いてあった。

(まだ使ってくれてるんだ)

嬉しくなる反面、昨日のことが頭に蘇る。

(あいつと一緒に出掛けるなんて、もしかしてつき合ってるとか?)

プロポーズを断られたと言っていた木原は、だからと言って凛を嫌いになった訳ではない。

それどころか、何とか助けてやってくれないか?と航に声をかけてきた。

自分のことより凛のこと。
木原はきっと今も、凛の為にあれこれと気遣っているに違いない。

そして先月は自分を追い抜いて成績トップになってみせた。

腐ったりいじけたりせず、仕事に真剣に向き合って自分を高めている。

そんな木原が、もう一度凛に告白したら?

(今のあいつなら、惚れられるのも頷ける)

それと気になっていたことがもう一つ。

飲み会の後のカラオケで、凛は途中で席を立って帰って行った。
その目には涙が浮かび、木原が急いであとを追ったことにも、航は気づいていた。

おそらく凛を呼び止めて話をしたのだろう。
泣いている理由を聞き出して、慰めたに違いない。

そこで告白をしたのだとしたら?
君を守ると誓ったのだとしたら?

だから昨日二人は会っていたのだ。
凛がイエスと返事をして、初めてのデートに出掛けたのかもしれない。

そう思うと、航の心の中に何とも言えない寂しさが広がっていった。