「いいよ。見てみなよ。」


私に言われた言葉に女子二人が、ありがとうと私に笑顔を向けて紙袋の中の洋服をキャーと言いながら漁る。


「私もいい?」
「俺も…いいかな?」

続々集まるクラスメイトが、遠慮がちに私に許可を貰おうとしている。黒川君が目の前にいるのか、流石に強奪する人は居ない。


「早い者勝ちだよ。」


私がそう言うと、更に集まるクラスメイト。先に洋服を選んだ女子は私に、

「木村さん!私お小遣い無くて、このスカート欲しかったの。」
「私も…。私太ってるから着れないけど、妹にあげたかったの。」
「俺、部活やってるから彼女にプレゼントあげられなくて、彼女喜ぶわ。」



「「木村さん本当にありがとう」」


服を選んだ女子も男子も、初めて私に笑顔を向けてお礼を言ってくれる。
こんなに同級生と話したことない。照れ臭いけど、なんだか嬉しい。

あれだけあった洋服達がみるみる無くなっていき、流石の黒川君も


「幸子の洋服無くなるぞ?」


ガヤガヤ皆が楽しそうに選んでいる中、心配そうに私に話しかけてくる。


「私もう取ってあるよ。」
「あれ?いつの間に。」


昨日写真で見えた一枚の水色のシャツのワンピース。
あの時、海で黒川君が着ていたシャツの色と同じ色。
渡された紙袋から見えたワンピースを、皆が来る前にサッと膝の上に移動させておいていた。


「これでいい。」
「ふ~ん。」



黒川君には申し訳ないが、本当に置場所がないんだ。
せっかくくれた沢山の洋服も、日も当たらない小さな物置小屋に入らない。