次の日登校すると「例のブツだ。仕舞いな。」と、何かの組織のようにクールに話す黒川君の手には、信じられない程大きな紙袋に入った大量の洋服達。

それも三つ!!!

「何処に仕舞うのよ!!」
「だから学校に持っていったら邪魔かなって思って予定聞いたんだよ。」
「じゃあ小分けにしてよ!」


机の上に乗せられた大量の洋服達。私の机に全て乗らず、黒川君の机にも一つ置いてある。

数十枚以上はあるであろう、クラスメイトの女子達がチラチラと羨ましそうにこちらを見ている。

最初は皆が話しかけやすいように振る舞っていた黒川君だが、あの一件から愛想も振り撒かない黒川に近寄りがたくなってしまったのか、余程の事じゃない限り話しかけられない。


「これ全部くれるの?」
「いいよ。去年の服も混ざってるから流行りものではないけど、着られたら何でもいいだろ?」
「じゃあ…。全部私のものね?私の好きなようにしていいよね?」
「…いい…けど?」




「すいませーん!!黒川君が私に洋服持ってきてくれてるんだけど、多すぎてさぁ!欲しい人いるー!?」


ざわっ!とクラス中がどよめき、


「え…いいのかな?」
「ヤバい、欲しい。」
「俺も彼女にあげたい。」
「でも…でも。」


皆、私の大きな声にうろたえ、素直に動く者は一人も居ない。
むしろ黒川君でさえ、目が点になって固まっている。


「困ったなぁ。こんなにあっても困るなぁ。誰か貰ってくれないかなぁ?」


と、大根役者を演じて続けて大きな声を出して独り言を話す。

と、一番近くにいた女子二人が申し訳なさそうに


「あ、あの…貰ってもいいかな?」
「厚かましいとは思うけど…。」