「これがLINE。文字は打ってれば自然と覚えるからとにかく打て。友達は俺しか入れてないけど友達増やすのは好きにしろ。その代わり俺のLINEは絶対周りに教えるなよ。動画や映画観たい時はこれとこのアプリ。」

「…………。」

「俺と、あと何かあった時の秀紀さんの番号も入ってるから。」

「…………。」

「聞いてるか?」

「ん、あ、ごめん。聞いてる。」



昼休み、いつもの屋上の手前の踊り場で昨日話していた携帯を、本当に私に買ってくれたらしく、説明してくれる黒川君。

だけどなんだか昨日の夜から全然頭が働かなくて、寝付けない夜に初めて寝坊して遅刻どころか休んでしまった定食屋。

連絡をしたくても家の電話もなくて、学校の職員室に置いてある生徒が使える電話になけなしの小銭を使ってお店に謝罪の電話を入れる。


『何かあったかと思ったわよ。幸っちゃん携帯無いから連絡しようもないし。とにかくこっちは大丈夫だったから気にしないでね。また明日ね。』
『本当に…すみません。』


寝坊ごときでバイトを休んでしまった申し訳無さと、いつも持たされるお弁当を食べられない悔しさに、昨日の夜からやたらと空腹で頭が全然回らない。

2時間目の数学の授業中に現れた黒川君の姿にも正直あんまり覚えていなかった。




「元気無くね?」
「別に。」

お腹空いているなんて、恥ずかしさで絶対言いたくない。
昨日から水道水しか飲んでいないなんて、絶対言いたくない。


「つかお前顔色最悪過ぎない?」
「………。」
「幸子?」
「………。」








突然視界が白くモヤがかかったと思ったら、一瞬にしてブラックアウト。


「おい!大丈夫か!?おい!」