皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました


先に階段を降りはじめると、黒川君の携帯から音が鳴っている。

「…はい…はい。りょ~かい。」

特に気にもしないでさっきの無理やり連れて来られた慣れない廊下を歩くと、またしても彼の姿は気付けばいなくなっていた。

いや、せめて教室まで誘導して!

授業をしているクラスの横を、気配を消して自分のクラスを探していく。



ようやく見えた自分の教室の後ろの扉を、音を立てないようにゆっくり開けると授業中なのにまたしても朝の同様、一斉に机と椅子が床にずれる音と共に、全員の目線を一斉に浴びて気まずくなる。

黒川君が居ない事を良いことに、



「は?一人?」
「えー瑠色騙されてるって。」
「晒してやろうよ。」
「バレたらヤバくね?」


と、ヒソヒソ話とは言えない沢山の声が私の方へ向けられて、国語の授業中だった先生は知ってか知らないでか授業を止める事なく続けていた。

黙って国語の教科書を開く。
机の横にかけていたリュックの中身が、イタズラされていない事に安堵するが、それは万が一黒川君と一緒に戻ってきたらマズイからだろう。

小学生の時は捲る度に書かれた悪口、中学の時は原型を留めていない教科書。

ノートは持ち歩くのを止めた。
ペンひとつで人の悪口を書き放題の自由帳になるノートなんて、当時は持たない方が賢いだろう。



きっと…高校の教科書もそうなる運命になるのかなと思いながら、
100円ショップで揃えたノートの一枚目に黒板に書かれた文章を書き込んでいく。