「別に本当に付き合うわけじゃないよ。付き合うフリをして欲しいんだ。期間限定でいいから!俺の彼女になるって名誉な事だよ?」

「そんな暇ないわ。」

「は?」


階段の数が心の中で11段数えて立ち上がり、振り向いて黒川君を見る。


「悪いけど…私そんな暇ないわ。毎朝毎晩バイトで無理。黒川君も学校の許可貰って働いてると思うけど私もおんなじ。忙しいし興味もない。」

「え…え…。」

「あ、別に男性に興味が無いんじゃなくて彼女とか付き合うとかの方ね、ずっとそんなの無縁だし。私、今日生きる事で精一杯。明日の事考える暇も無い。」

「………。」


彼の返事が無く、一瞬お互い見つめ合い沈黙の空気、だけど私は目線を黒川君から階段に移し、トントンと一段ずつ降りながら嘘偽りなく話していく。


「でも黒川君は私だって皆と同じイケメンだと思ったし、黒川君からいっつも良い匂いしてるなって思ってる。私ずっと洗剤もシャンプーも100円ショップのしか使った事ないから。」

「あ…。」



11段目を降りた所で上から声が聞こえたが、足は全く止まらない。