横のイケメンの視線のせいで身体が動かない。この人の眼力にそんな効果が発動されてしまうのか。

黒川君に見つめられてドキドキとかではなく、
まるで獲物を捕らえる弱肉強食のような感覚。

もはや見つめられてるといったそんな生半可な優しい世界ではない、むしろちょっと睨んでると言っても過言ではない。


「…あの…見すぎ…なんですが…。」
「…………………。」


黒川君にしか聞こえない声量で話したつもりが全く聞こえていないのか、それとも無視をされているのか。


「…あの…。」
「…………。」



何なのこの人。
昨日といい今日といい。人の事お構い無し過ぎない??

フワッと鼻に残る匂いが香水なのか、それとも洗剤の匂いなのか、よくわからない良い香りがもはや私の中で、嫌な思い出の分類になってしまいそうになる。






「俺と付き合って欲しいんだけど。」


本鈴が鳴る数秒前。
多分この人声量間違えた。

私を含め、クラスメイト全員がガタガタ!と机や椅子がずれる音を立てて一斉に黒川君か私のどちらか、あるいは二人を直視してきた。

担任にも聞こえたのか、持っていた出席簿をパタンと落として本鈴が鳴った後もHRを始めず固まっている。