「幸子って名前ちょっと今時珍しいよな。」
「珍しい…というか、古いのよ。」
「まぁ正直ちょっと古いわな。でも良い名前だよ。幸せになって欲しい意味が込められてるんだよ、きっと。なぁオヤジ!!」
「オヤジっつぅな!」


広くて綺麗なリビングで、仕事が休みの瑠色と三人でマッタリと過ごす夜の時間。


「でもお父さん、私の名前ちょっと昭和っぽいよね。誰がつけたの?」
「……俺だ。」



照れくさそうにお父さんがソファーでゴロンと横になって、別のソファーに座っている私と瑠色に背中を向けてしまう。

「そうなんだ。初めて聞いた。」
「オヤジがつけたの?なんで?」

背中を向けたまま、小さな声でボソボソとお父さんが答える。


「まぁ…幸子が予定日より少し早くて、1500g未満で産まれたお前が、どんな姿になっても幸せになって欲しいのと…女の子だからやっぱり『子』がついた方がいいと思って…。」

「そう思ってたんならもっと早く幸せにしてやれよオヤジ。」

「…悪かったな。」



初めて聞かされる私の産まれた時の話と名前の由来。私だけ少し古い名前に、周りに馬鹿にされたことも過去にはある。

だけど、お父さんがこの名前にしてくれた理由に嬉しくて、並んでいた瑠色の肩に頭を寄せる。
寄せた頭に腕を通し、その腕で私の肩に手を乗せてくれる瑠色。

お父さん、私、幸せだよ。


「瑠色の名前の漢字も凄いよね?誰が名付けてくれたの?」

「俺?婆さん。産まれた俺の顔を見て、綺麗過ぎて大スターになるって騒いで寝ないで考えた名前だって。」

「お婆さんセンスあるね!」

「まぁ婆さんも昔女優だったからな。ちなみに母さんは一般人だけど綺麗過ぎて、今でもストーカーに合ってるぞ?だから警察官の父さんと結婚したって聞いたわ。」





っ!?
知られざる瑠色の家族事情。
まだまだ知らないことばかり。



オマケ③【完】