「え…だって…暗いじゃん。」
「だから何?プリン食ってないんだけど。」
「あ、はいはい。出します出します。」

ガタン!「いたぁぁ!」

流石に台所まで豆電気の光は届かなくて、テーブルの足に、足の小指をぶつけて痛くて悶絶する。

「アーハッハッハ!ヤバいって!面白すぎるだろ。」
「全然笑えないから。痛すぎる…。」

足をヒョコヒョコさせながら冷蔵庫からプリンとスプーンを出して、今度は物にぶつからない様にゆっくり歩きながら黒川君に渡す。

「はい、どうぞ。」
「ありがと。まぁ座れよ。」
「わかった。」

と、また台所の椅子に向かおうとしたら、







「いやいや、隣に座れよって話なんだけど。」


薄暗い豆電気の光に、目が慣れてきて黒川君の顔が段々と鮮明に見えてくる。

今更ながら、誰も来ないこの状況。黒川君を簡単に家に上げて私なんか軽い女みたいじゃない?


「どうしたの?」

さっきまであんなに笑ってたじゃん。急に優しい声のトーンで話されて、なんだか返事が出来ない。

「…何もしないから。隣座ってよ。」




気持ちを見透かされたかのような、そしてそれを言わせてしまった黒川君の言葉になんだか申し訳なくなって、少し離れて座る。

「プリン食うか?」
「…食べなよ。」

ペリペリとプリンを開ける音に、本当に食べるんだと少しホッとして彼の食べる姿と、何のプリンだろと容器を一瞬見ていると、

「んまっ。このプリンマジで美味い。」
「そうなの?」

少し離れているのに甘い匂いがこっちまで流れてきて、つい食べている顔を覗いてしまう。





「その頬誰にやられた?」

食べてる手は止まっていない。カシャッカシャッとプリンのプラスチックの容器を擦る音と一緒に黒川君が私の方を見ないで聞いてきた。