俺がいるから










嘘つきね
嘘つきだらけね

ずっと放っておいてるくせに

近くにいるようで居ないくせに




でもその言葉が嬉しくて、安心出来たのは事実で、そして涙はまだ止まらない。


止まらない。




「…ぅっうっ。早く来て…お父さんが…。」
「木村さんのご家族の方いらっしゃいますか?」


廊下で看護師さんが私を呼びに探している。行かなきゃ。


「…ごめん、呼ばれたから。」
「わかった。」

急いで電話を切り、ズボンのポケットに携帯を入れて案内された部屋に誘導される。

ドアを開けるとお父さんは居なく、椅子に座った白衣を着た医者と、数人の看護師が行ったり来たりしていた。


「え~と。ご家族様ですよね。他に大人の方は…。」
「居ません。私だけです。」

一瞬困ったような表情をした医者を私は気付いていたが、事実なので仕方ない。
物心ついた時から私にはお婆ちゃんやお爺ちゃんと呼べる身内を聞いたことがない。

お父さんに兄弟がいるのかも全く知らないし、親戚というものが居ないのが当たり前の私にとって重要な事ではなかった。


「お父さんね、さっき意識を…目を覚ましたけどまた寝てます。アルコールの飲み過ぎで、肝臓が凄く良くない状態でした。」
「…はい。」
「アルコール性肝炎といって、入院が必要になってきます。緊急手術等はありませんが、このままだと肝硬変を起こして最悪なケースも考えられたと思います。」
「…………。」


分かりやすく説明をしてくれていると思うが、どんな病気でどんな症状なのかはわからず無言になってしまう。


「先ずは断酒です。これは根気よく、長い目で見ないといけないものです。入院中は当たり前ですがアルコールは一切摂取出来ませんが…。」
「……はい。」


家に帰れた時、またアルコールを飲むようになったらお父さんは死ぬかもしれないと伝えたいのだろう。