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ある日、少女の住む貧しい村に、あろうことか王子様が訪れました。


思いもよらない出来事に住民たちは、家の扉や壁に隠れて王子様の行列をじっと眺めます。

華やかに色とりどりの装飾が飛び交う行列は、さながらパレードのようでした。


王家や城下町とも一切関係ない国の中でも外れの町で育ち、

礼儀も作法も知るはずのない町の人たちは、決して王子様の行列の前へと姿を表そうとはしませんでした。

賑やかな行列とは対照的に、静かにただじっと様子を伺いながら王子様が通り過ぎるのを待っているのです。

それほど、少女の暮らす町と王子様は、かけ離れた存在だったのです。


「あの王子が…自由気ままで王様を困らしているのだと、城下町では話題の王子様だ」


つい最近まで城下町で出稼ぎに出ていた近所のおじさんが、そっと小声で教えてくれました。


少女は、その情報を耳にしながら、確かに楽しそうで無邪気な王子様を目にします。

そして、きっと素敵な生活を送っているのだろうと、

想像もしようがない王子様の生活を他人事のように思い描いていました。


結局王子様は、何をするでもなく、ただこの辺りを通過してお城へと帰っていきました。


何も聞かされていなかったのだから、当然と言えば当然です。

おじさんの話の通りなら、きっと気ままな王子様の気まぐれで何となくこの町を通るルートを選択しただけだろう。


少女は自身をそう納得させて、王子様のパレードが道に残していった色とりどりの装飾を拾い集めました。


紙吹雪やクラッカーのような装飾一つ一つでさえ、高そうなキラキラした紙ばかりで、ただただ、自分達との世界に違いに驚かされるばかりでした。


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