でも今は、それだけでは足りない気がした。
この物足りなさはなんなのかを考えていると。
コンコン、とドアが鳴った。
「……誰?」
「俺」
藤太の声。
わたくしは慌てて立ち上がった。
ドアを開ける。
「どうかしまして?」
「……話がある」
「話?」
藤太はしばらく黙っていた。
何度か口を開けたり閉じたりしたと思えば。
「俺、みそら園の決着がついたらここを出る」
「……え?」
頭の中が真っ白になった。
「どっちになっても辞める」
「どうして……」
「これ以上、お前に迷惑をかけたくない」
「また、その話……」
「ごめん」
藤太が笑った。
その笑顔が、苦しそうだった。
「そのときまで、よろしくな」
「……嫌」
「瞳」
「嫌です」
「……」
「あなたがいなくなるのは、嫌」
自分でも驚いた。
こんな言葉が、こんなにも自然に出てくるなんて。


