噂なんてどうでもいい。
身分なんて。
周囲の目なんて。
「わたくしは……」
声が震えた。
「あなたが勝手に距離を取るほうが、嫌なんです」
藤太が唇をかんだ。
「……」
「わたくしが何を思っているかも聞かずに」
「……」
「わたくしのためだなんて決めつけて」
「瞳」
「嫌です」
わたくしは目を逸らした。
「そんなふうに、わたくしの前から離れていくのは……嫌」
長すぎる沈黙が落ちる。
わたくしは耐えられなくなって、部屋を出ようとした。
その腕を藤太がつかんだ。
「待って」
「……離してください」
「嫌だ」
「……!」
いつもなら、こんなふうにわたくしを止めることなんてない。
「俺だって」
藤太の声が震えていた。
「離れたいわけじゃない」
「……」
「お前のそばにいたい」
心臓が、大きく鳴った。
「でも、ダメなんだ」


