強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ

 


 その武道は、力で相手をねじ伏せるものではない。

 見るのは相手の動き。

 そこから隙を見つけ、素早く距離を測る。

 ここからの最適解は──。


「やっ!」


 足を払う。


「ぐっ!」


 金髪が地面に尻もちをつく。

 ……上手くいった。

 うっかり気を抜いてしまう。彼だけではないのに。


「瞳、下がれ!」


 藤太の声が飛んできた。


「あっ」


 振り向いた瞬間、今度は坊主頭が迫っていた。


「くっ!」


 とっさに横へ飛び、最低限の距離を取る。

 拳が頬と耳のすぐ横を通り過ぎ、風を感じた。


「は……」


 足が震える。

 頭ではわかっていても、実際に殴られると思ったら身体が固まってしまった。まずい。

 その一瞬を見逃さず、坊主頭は腕を伸ばしてきた。

 慌てて後ろへ下がり──足がもつれた。


「あっ……!」


 衝撃に備えて目をつむる。