強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ




「今更ですわ」


 わたくしは藤太の隙を突いて、先に外に出た。


「瞳!」


 藤太の呼びかけに振り向くことはない。


「なんだてめぇ?」

「関係ねぇのは引っ込んでろよ」

「お断りします」

「あ?」

「あなたたちのような方に、うちの使用人を引き渡すつもりはありません」


 自分でも驚くほど声は冷静で、まるで自分のものではないような感じがする。

 怖くない。そう心の中で言い聞かせる。

 ──ううん、やっぱり怖い。

 ものすごく怖い。

 でもここで退いてしまえば、藤太がきっと傷つく。

 それはこうして立ち向かうよりも恐ろしかった。


「お嬢様は大人しく──」


 金髪の少年がわたくしの腕をつかむ瞬間、反射的に身体をひねる。


「は……?」


 相手の手が緩み、その隙に腕を引いて相手の懐へ入り込む。

 教育の一環で、勉強以外にも武道を幼少期から習わされている。