いくつあるのかも分からない部屋。

 どこかへ行き着くこともなく、無限遠に続いていく廊下。

 上にも下にも永久に延びていく階段。

 けれど、どこか牢獄のようにも感じられる。自分を閉じこめておくための……

 嘆息を漏らしたとき、遠くから透き通った声が聞こえてきた。

 奇妙なことに、この牢獄の外から聞こえてくるように感じられた。

 そうか、頭の中に直接語りかけてきているのか。

 意味のないことだと分かっていても、周囲を見渡す。

 歌っているわけではないのに、リズミカルに弾む声。

 目を閉じて、その声に意識を集中させた。

 『……私たち仲よくなれると思うの』

 もしかして、これがそうなのか?

 『私と契約しようよ……』

 そうだ、そうに違いない。

 こうも優しく楽しそうにお願いされては、抗えるはずもなかった。

 心を決めると、脳裏に光が射した。